新河岸川その二


前回に引き続き新河岸川をとりあげます。今回は、新河岸川沿いをさらに二、三十分下り扇河岸、少し先の下・上新河岸、牛子河岸を紹介します。残念ながら寺尾河岸の跡までは足をのばせませんでした。
さて紹介するといっても私には、新しい見聞をもちあわせていませんので、前回参照した斎藤貞夫氏の「川越舟運」から下新河岸の船着き場跡に隣接する日枝神社境内に残る観音堂と馬頭尊とにまつわる逸話等についての記述について引用させていただきます。
──帰命頂来きみようちようらい新河岸の
観音さまは誰が建てた
木ノ目きのめの長者がお建てやる
何の為とてお建てやる
その児の為にお建てやる
こんな御詠歌が、筆者の住む新河岸観音堂付近の古老たちの間に伝わっている。
さて、右にあげた御詠歌ごえいかの一節、木ノ目(現・川越市)の長者なる者が、いつこの新河岸の地に観音堂を勧請かんじょうしたかは不明であるが、『入間郡誌』(安部立郎編)によれば、木ノ目長者といわれた大河内某が、娘の病気平癒を祈願して建立したのがその始まりだと記されている。